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vol.1 高知県の若手クリエイターユニット「chuu!」

更新日:2020年9月9日

sawachinaがクラフトコーラの製造を通じて伝えていきたいストーリー。

それは高知の豊かな食材と食文化、そして人です。

vol.1は、sawachinaのコンセプトからラベルデザイン、リリースまでを手がけた

高知県出身の編集者とデザイナーの2人組「chuu!」について。

SNSを通して高知県の魅力を発信し続ける2人の育ってきた環境や高知への想いをお伝えます。



高知県の若手クリエイターユニット「chuu!」

chuu!は編集者であるかずさまりやと、デザイナー・溝渕恵里の2人組。インスタグラム上でマガジンを展開する「インスタマガジン」を中心に高知県の魅力を発信しています。始まりは2019年10月。20代の若手クリエイターとして「若者に高知の魅力を伝えたい」という想いで活動をスタートしました。sawachinaの企画者である小野さんとの出会いも、この「インスタマガジン」でした。






2人はどちらも高知県出身ですが、出会ったのは社会人になってから。社会人になって数年の間にかずささんは広島県の出版社で、溝渕さんは大阪府のデザイン会社でそれぞれ経験を積んでいます。今や同じ方向を向いて、若者に高知の魅力を伝えようと活動をしている2人ですが、実は学生時代に高知県へ抱いた想いは正反対でした。



高知を否定されることは自分のアイデンティティを否定されること

かずささんは高知市の中心部で生まれ育ちましたが、祖父母が山で暮らしていたこともあり、自然に触れる機会が多かったといいます。

「朝は澄んだ空気のなかを歩きながらイタドリを採り、昼間は祖父の運転するバイクの後ろに乗って木漏れ日がさす山道を駆け回る。自分の過ごす土地に不満を抱いたことがなく、今思えば、高知の自然の中での体験が私にとっての"豊かさ"の形成でした」。






違和感を覚えたのは高校2年性の秋。

『高知県の活性化についてグループで考えよう』という内容の授業で、調べれば調べるほど高知県は"成績の悪い"県でした。人口や県民所得、学力調査の数値は下から数えた方が早い。こんなにも豊かなのに、数値で見ると高知県は活性化しないとまずい状態なのかと違和感を感じつつも、同時に高知県について知ることはとても楽しかったため、「地域」について学ぶべく高知工科大学のマネジメント学部へ進学します。県外生が学年の7割を占めていて、多くの友人は高知県の環境に落胆していました。『大学の最寄駅に到着した瞬間にキャンパスライフを諦めた』『地元へ帰りたい』という友人の言葉を聞くたびに、なんだか自分自身を否定されているような、悔しくて悲しい気持ちになったといいます。


「就職活動を始めた先輩や友人から『高知県では仕事がない』と何度耳にしたかわかりません。私はその頃には、なんだかもう意地になっていて、頑なに『県外へ出るものか』と思っていました」。

そんなときに出会ったのが雑誌『季刊高知』を発行している野並編集長。インターンやアルバイトで数ヶ月ほどお世話になり、雑誌を作ることにとても興味が湧いていたかずささんに、「高知で仕事をしたいなら、若いうちに県外に出た方が良い」と教えてくれました。高知で働くために一度県外に出るという考え方は当時のかずささんにとって目から鱗。野並編集長の言葉を機に県外へも視野を広げて広島の出版社で働くことを決めました。


「社会人3年目になった時、『キャンパスライフを諦めた』発言の友人を含め、多くの同級生がよさこいの時期になると高知県へ訪れたり、なんなら高知へ移住している姿を見て、データではわからない高知の豊かさが同世代の若者にもきちんと伝わっていることを嬉しく思いました」。高知の魅力を自分の媒体で伝えたい。3年間広島で編集を学び、念願の高知県へ帰ってきたかずささんは25歳で独立することを決めました。



都心に出たいという思いから一転、"人に寄り添う"地域のデザイナーへ

香美市土佐山田町で生まれ育ち、京都造形芸術大学へ進学後、大阪のデザイン会社に就職をした溝渕さんは、幼い頃から絵を描くことが好きで、授業中にもよくノートに落書きをしていました。学校が公募した運動会のロゴマークにイラストが採用されるなど、学生時代から頭角を現していましたが、だからといって幼い頃からデザイナーの道を志していたわけではありませんでした。


「進学を決めるタイミングで『13歳のハローワーク』を開いて適職診断を行った結果、"グラフィックデザイナー"か"メイクアップアーティスト"に興味が湧きました。色々と調べていく中でデザイナーの方が食べて行けそうだと思い、デザインについて学ぶことができる京都造形芸術大学を受験して進学しました。当時の心境を振り返ると都会への憧れが強く、『周りと違うことをすると指をさされる、高知の外へ出たい』という想いが強かったです」。



少しずつ変化が現れたのは、長期休みに帰省をするタイミング。

高知へ帰ってきては、友達と川へ遊びに行ってカヌーをしたり、夜の街に呑みに出たり、高校生の時にはできなかった高知の楽しみ方を知っていきます。しかし、その時にはまだ高知県で就職するという考えはなく、むしろ都心へ出てみたいという気持ちは強くなり大阪のデザイン会社へ就職することを決めました。




会社では社会人としての基礎やクライアントの意思を組み、複数の形で提案することを学びました。しかし、実際にクライアントとコミュニケーションをとる機会は少なく、「自分の作っているものは果たして誰のためになっているものなのだろう」と疑問が生まれます。「仕事をするなら小規模でもいいから人と会話をしながら、ものづくりをしていきたい」。そんな悩みを抱えているタイミングで世間では"地域デザイナー"が注目を集め始めていました。地域でもデザインの仕事ができることに気づいた溝渕さんは、社会人5年目になるタイミングで地域おこし協力隊という形で高知県土佐市に移住することを決めました。



「最初は、名刺を持って挨拶回りから。クライアントと直接コミュニケーションをとりながら制作物を作り、チラシ1枚の仕事から少しずつ信頼されていくことがとても嬉しかったです」。


そして地域おこし協力隊として3年間の満期を迎えた溝渕さんは29歳でフリーランスのデザイナーとして独立します。






1人では伝わらない領域も、2人だと伝えられる

2人が出会ったのは、2018年11月。高知のクリエイターが多く集まるワークショップのグループワークでたまたま同じ班になったことがきっかけでした。その時はお互いに若いクリエイターがいるな、という認識で名刺交換をした程度。その後はお茶を飲んだり、ご飯を食べに行ったり、なんとなく縁がつながっている状態で、まさか2人で活動を始めるなんて思ってもいませんでした。2019年の夏にかずささんが携わっていた仕事でデザイナーを探すことになり溝渕さんに声をかけました。


「正直、それまでチームで仕事をしていてもたった1人で仕事をしている感覚だったので、クリエイターとして同じ熱量をもって仕事に向き合ってくれる恵里さんにすごく助けられました。『どうすれば良い制作物になるのか』一緒に考えてくれる人がチームに入ってくれるだけで、こんなにも前を向いて楽しく仕事ができるんだと教えてくれたのが恵里さんでした」。




仕事をする一方で「高知の魅力を自分の媒体で伝えたい」と、かずささんが個人的に動かしていた『インスタマガジン』は、高知への想いが強すぎて、ターゲットである「高知の魅力にまだ気づいて居ない若者」へなかなか届けることができていませんでした。仕事を通して信頼関係を気づいた2人はかずささんからの誘いで2019年10月にchuu!としてインスタマガジンをスタートさせます。溝渕さんのデザインは、かずささんの高知への強い想いをターゲットに合わせてフラットに表現してくれました。


「3年後には仕事を頼んでもらえる存在になっていたらいいね」。そんな雰囲気で始めたユニットだったので、まさかその2ヶ月後にsawachinaの企画者である小野さんから仕事を依頼されるとは想像すらしていませんでした。


「コンセプトからデザイン、そしてリリースまでの初めての仕事。sawachinaは、1人では思いつけないアイデアや、気づけない改善点を2人だと見つけていけると確信に変えてくれた仕事でした。そうした集大成であるsawachinaが県内外のミレニアル世代を中心に幅広い世代の方に楽しんでもらえていることをとても嬉しく思いますし、何より私たちを信頼して大切なプロジェクトを任せてくれた小野さんに感謝をしています」。



2人で高知を楽しむのがchuu!の在り方

「chuu!(ちゅう)」は高知県民が語尾に使う「〜しちゅう」という土佐弁から名付けました。日本語では珍しく現在進行形の意味合いで使える方言です。今を伝えるだけでも、未来を見据えるだけでもなく、過去を踏まえて、現在を考え、未来へ続いていける現在進行形の媒体であるように。なので、chuu!の取材対象は、新しいおしゃれなお店だけではなく、若い人達に知ってほしい高知を形成してきた歴史のあるお店や、高知の食材や環境に愛のある人たちを中心に構成されています。



「いいねの数値やフォロワーの数は、もちろん気にします。けれどそれは『どう伝えるか』の指標であって、企画は『私たちが楽しいこと・行ってみたい場所』を共有する形でいいのだなというのが、2人で出した結論です。活動してまだ1年足らず。私たちは共通点がたくさんありますが、女性として"母親になってみたい"という気持ちは特に同じ。家庭を持てた時にクリエイターとしてどのようにchuu!や仕事と向き合って行くのか、高知を楽しみながら考えていきたいです」。







profile

 

chuu! 2019年10月に高知県でクリエイターユニットを結成。その後、インスタグラム上で高知の魅力を発信する「インスタマガジン」を制作。2020年6月には高知クラフトコーラsawachinaのコンセプトからラベルデザイン、リリースまでを手がける。 インスタグラムアカウント chuu!(@chuu_kochi)

かずさまりや(@kazusa_mariya)

溝渕恵里(@2.0design_kochi)




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