世界中で愛されている二大コーラ飲料、ペプシとコカ・コーラ。スーパーやコンビニ、自動販売機など、どこでも見かけるこの二つのドリンクですが、「ペプシとコカコーラ、どっちが先に誕生したの?」と疑問に思ったことはありませんか?実は、この二つのコーラには100年以上にわたる長い歴史と、熾烈なライバル関係、そして味や戦略における興味深い違いが存在します。
この記事では、どちらが先に生まれたのかという疑問への答えはもちろん、それぞれの誕生秘話から、”コーラ戦争”と呼ばれるマーケティング競争、味やデザインの違い、そして日本での独自の展開まで、あらゆる角度から二つのコーラを徹底比較します。この記事を読めば、次にコーラを手に取るとき、その一口がもっと面白く、味わい深く感じられるかもしれません。
ペプシとコカコーラ、どっちが先に生まれたの?

結論から言うと、先に誕生したのはコカ・コーラです。 両者はどちらも19世紀後半のアメリカで薬剤師によって発明されましたが、その誕生には数年の差があります。ここでは、それぞれの誕生の経緯と、名前の由来について詳しく見ていきましょう。
先に誕生したのはコカ・コーラ
コカ・コーラが誕生したのは1886年です。 一方のペプシコーラが誕生したのは1893年で、当初は「Brad’s Drink(ブラッズドリンク)」という名前でした。 つまり、コカ・コーラの方がペプシコーラよりも7年早く世に出たことになります。
| 項目 | コカ・コーラ | ペプシコーラ |
|---|---|---|
| 誕生年 | 1886年 | 1893年 |
| 発明者 | ジョン・S・ペンバートン博士 | ケイレブ・ブラッドハム |
| 職業 | 薬剤師 | 薬剤師 |
| 誕生の地 | アメリカ・ジョージア州アトランタ | アメリカ・ノースカロライナ州ニューバーン |
| 当初の名称 | コカ・コーラ | Brad’s Drink(ブラッズドリンク) |
コカ・コーラの誕生秘話
コカ・コーラを発明したのは、アメリカ・ジョージア州アトランタの薬剤師、ジョン・S・ペンバートン博士です。 彼は南北戦争で負傷し、痛みを和らげるためにモルヒネを使用していましたが、その依存症に苦しんでいました。 そこで、モルヒネに代わる鎮痛効果のある薬用酒の開発に取り組みます。
当時、ヨーロッパではコカの葉の成分をワインに溶かし込んだ「ビン・マリアーニ」という薬用酒がブームとなっていました。 ペンバートン博士もこれにヒントを得て、独自のレシピを開発。しかし、アトランタで禁酒法が施行されることになり、ノンアルコールの飲料への改良を余儀なくされます。
研究を重ねる中で偶然、シロップの原液を水ではなく炭酸水で割ってしまったところ、これが非常においしいと評判になりました。 これが、現在私たちが知るコカ・コーラの原型となったのです。当初は薬局のソーダファウンテン(清涼飲料水などを提供するカウンター)で、1杯5セントで販売されていました。 「コカ・コーラ」という名前は、原料であるコカの葉(Coca leaf)とコーラナッツ(Kola nut)に由来すると言われていますが、日本コカ・コーラ社は語感の良さから名付けられたとしています。
ペプシ・コーラの誕生と名前の由来
ペプシコーラは、コカ・コーラの誕生から7年後の1893年、ノースカロライナ州の薬剤師ケイレブ・ブラッドハムによって発明されました。 当初は、彼自身の名前にちなんで「Brad’s Drink(ブラッズドリンク)」として薬局で販売されていました。
ブラッドハムが開発したこの飲み物は、消化不良の治療薬として作られたものでした。 そして1898年、この飲み物は「ペプシコーラ」と改名されます。 この「ペプシ」という名前の由来は、消化酵素である「ペプシン(Pepsin)」と、原料のコーラナッツから来ているとされています。
二大コーラの歴史を振り返る
コカ・コーラとペプシは、誕生以来100年以上にわたり、アメリカの、そして世界の歴史と共に歩んできました。その道のりは決して平坦なものではなく、特に両社の熾烈な競争は「コーラ戦争」と呼ばれ、マーケティング史において非常に有名な事例となっています。
大恐慌を乗り越えたペプシの戦略
初期の成功にもかかわらず、ペプシは第一次世界大戦後の砂糖価格の乱高下により経営破綻に追い込まれるなど、苦難の時代を経験します。 一方でコカ・コーラは着実にシェアを拡大し、不動の地位を築いていました。
しかし、1929年に始まった世界恐慌が、両社の運命を大きく変えるきっかけとなります。 経済的に困窮する人々が増える中、ペプシは大胆な戦略に打って出ました。それは、コカ・コーラと同じ5セントという価格で、2倍の量(12オンス)のボトルを販売するというものでした。 「同じ値段で2倍楽しめる」というキャッチフレーズは、当時の人々の心を掴み、ペプシの売上は劇的に増加。 この戦略により、ペプシは倒産の危機を乗り越え、コカ・コーラの強力なライバルとしての地位を確立したのです。
「コーラ戦争」の勃発とペプシチャレンジ
第二次世界大戦中、コカ・コーラは「世界中の米兵が5セントで飲めるようにする」と発表し、軍需品として世界中の戦地に供給されました。 これにより、コカ・コーラは世界的なブランドへと成長し、「古き良きアメリカの象徴」としてのイメージを不動のものにします。
戦後、王者コカ・コーラに対して、挑戦者ペプシは若者向けのマーケティングを展開します。 そして1975年、コーラ戦争を象徴する出来事が起こります。それが「ペプシチャレンジ」です。
このテストの結果、驚くべきことに多くの人がペプシの方がおいしいと回答したのです。 ペプシはこの結果を大々的にCMで放送し、コカ・コーラの牙城に揺さぶりをかけました。 このキャンペーンは大きな反響を呼び、ペプシのシェアを大きく押し上げることに成功しました。 焦ったコカ・コーラは、自社の社員で同様のテストを行いましたが、やはり半数以上がペプシを選ぶという衝撃的な結果になったと言われています。
ニュー・コーク事件と王者の逆襲
ペプシチャレンジの成功に危機感を抱いたコカ・コーラは、1985年に大きな決断を下します。それは、発売以来99年間守り続けてきたオリジナルの味を変更し、「ニュー・コーク」を発売するというものでした。 事前の味覚テストではニュー・コークがペプシよりも高い評価を得ていたため、コカ・コーラ社はこの決断に自信を持っていました。
しかし、この変更は消費者からの猛烈な反発を招きます。 「古き良き味を返せ」という抗議の電話や手紙が殺到し、不買運動にまで発展しました。 消費者は、コカ・コーラの味だけでなく、そのブランドが持つ「アメリカの伝統」という価値を愛していたのです。
この騒動を受け、コカ・コーラはわずか3ヶ月でニュー・コークの販売を中止し、「コカ・コーラ・クラシック」として元の味を復活させました。 この決定は熱狂的に受け入れられ、結果的にコカ・コーラの売上は以前よりも増加。皮肉なことに、この「史上最大の失敗」と言われた事件は、消費者のコカ・コーラに対するブランド愛を再確認させ、王者の地位をより強固なものにする結果となったのです。
味や成分、デザインの違いは?

長年のライバルであるペプシとコカ・コーラですが、その違いは歴史やマーケティングだけではありません。味や原材料、そしてブランドの象徴であるロゴやボトルのデザインにも、それぞれ際立った特徴があります。
原材料と味の比較
多くの人が感じるとおり、ペプシとコカ・コーラの味は異なります。一般的に、ペプシは柑橘系の風味がして爽やかな味わい、コカ・コーラはバニラやレーズンのような香りで甘みが強いと言われています。
この味の違いを生み出す要因の一つとして、原材料の違いが挙げられます。作家のマルコム・グラッドウェルによると、ペプシの原材料にはコカ・コーラには含まれていないクエン酸が入っているそうです。 クエン酸は柑橘系の果物に含まれる酸味成分で、これがペプシ特有の爽やかでキレのある後味を生み出していると考えられています。 一方、コカ・コーラは砂糖の量が比較的少なく、甘さが控えめという意見もありますが、より甘くまろやかな味わいと感じる人も多いようです。
| ペプシコーラ | コカ・コーラ | |
|---|---|---|
| 風味 | シトラス風のさわやかな味 | バニラやレーズンの香り |
| 味わい | 甘みが強く、爽快な後味 | 甘さが控えめ、またはまろやかな甘み |
| 特徴的な原材料 | クエン酸が含まれる | – |
カフェインやカロリーの違い
カフェインやカロリーについても、両者にはわずかな違いがあります。製品によって異なりますが、一般的なレギュラータイプのコーラで比較すると、以下のようになります。
- カフェイン: 製品によって含有量は異なりますが、一般的には同程度のカフェインが含まれています。
- カロリー: 砂糖の使用量に違いがあるため、カロリーにも差が出ることがあります。ペプシの方が砂糖の使用量が多く甘みが強いという指摘もあり、その場合はカロリーも高くなる傾向にあります。
ただし、現在では「ゼロカロリー」や「特定保健用食品(トクホ)」など、多様なニーズに応える製品が両社から発売されており、一概にどちらが高い・低いとは言えなくなっています。
ロゴとボトルのデザイン変遷
ブランドイメージを視覚的に伝えるロゴとボトルも、両社の戦略の違いを象徴しています。
コカ・コーラは、1886年の創業以来、流れるような筆記体の「スペンセリアン・スクリプト」ロゴをほとんど変えずに使い続けています。 この一貫したデザインは、伝統と信頼性の象徴となっています。また、暗闇で触ってもわかるようにデザインされた「コンツアーボトル」は、その独特の曲線美で広く知られており、ブランドのアイコン的存在です。
一方、ペプシは時代に合わせてロゴデザインを積極的に変更してきました。 初期のロゴはコカ・コーラに似ていましたが、次第に独自のスタイルを確立。特に、赤・白・青の3色を使った球体の「ペプシ・グローブ」は、若々しさやダイナミズムを表現しており、「挑戦者」としてのブランドイメージを反映しています。 このように、ロゴの変遷を追うだけでも、両社のブランド戦略の違いが見えてきて非常に興味深いと言えるでしょう。
マーケティング戦略の比較
コカ・コーラとペプシの戦いは、まさにマーケティングの戦いの歴史でもあります。 王者として君臨するコカ・コーラと、その牙城を崩そうとする挑戦者ペプシ。両社は対照的な戦略で、消費者の心を掴もうとしてきました。
コカ・コーラの「幸福」を売る戦略
コカ・コーラは、一貫して「幸福感」や「人々のつながり」といった普遍的な価値をブランドイメージに結びつけてきました。 例えば、サンタクロースを起用したクリスマスの広告キャンペーンは、コカ・コーラが冬の楽しいひとときの象徴としての地位を確立するのに大きく貢献しました。
彼らの広告は、製品そのものの味や機能を直接的にアピールするよりも、コカ・コーラがあることで生まれる楽しい時間や感動的な瞬間を描くことが多いのが特徴です。これは、単なる飲料ではなく、文化やライフスタイルの一部としてブランドを位置づける戦略と言えます。常に市場のリーダーであるという自信から、ライバルを意識した比較広告は行わず、「王者」としての揺るぎない姿勢を貫いています。
ペプシの「挑戦者」としての戦略
一方、ペプシは常にコカ・コーラを意識し、「挑戦者」としての立場を明確にしたマーケティングを展開してきました。 その象徴が、前述の「ペプシチャレンジ」です。 直接的な比較広告によって、味における優位性をアピールし、消費者の固定観念に揺さぶりをかけました。
また、ペプシは「新世代(The Choice of a New Generation)」をスローガンに掲げ、若者文化と密接に結びついたキャンペーンを積極的に行いました。 伝統や歴史を重んじるコカ・コーラに対し、新しさ、楽しさ、若々しさといった価値を前面に押し出すことで差別化を図ったのです。この戦略は、時代の変化に敏感な若者層から大きな支持を得ることに成功しました。
有名セレブを起用した広告対決
両社の広告戦略を語る上で欠かせないのが、有名セレブの起用です。特に1980年代以降、この競争は激化しました。
ペプシは、当時絶大な人気を誇ったマイケル・ジャクソンをCMキャラクターに起用し、歴史的な成功を収めました。 革新的な音楽とダンスで時代を象徴するマイケル・ジャクソンのイメージは、ペプシが掲げる「新世代」のメッセージと完璧に合致し、ブランドイメージを飛躍的に向上させました。その後も、ブリトニー・スピアーズやビヨンセなど、時代を象徴するトップスターを次々と起用し、若者文化のリーダーとしての地位を確固たるものにしています。
対するコカ・コーラも、サッカーの王様ペレをはじめ、数々の大物アーティストやアスリートを広告に起用してきました。日本では、矢沢永吉さんや安室奈美恵さんなど、国民的なスターがCMに登場し、幅広い世代にブランドの魅力を伝えています。このように、セレブを起用した華やかな広告合戦も、「コーラ戦争」の大きな見どころの一つなのです。
日本での展開と独自の歴史

アメリカで生まれたコカ・コーラとペプシですが、その人気は海を越え、日本でも多くの人々に親しまれています。しかし、日本での展開の歴史や戦略は、本国アメリカとは少し異なる独自の道を歩んできました。
日本上陸はいつ?
日本に先に上陸したのは、意外にもペプシでした。第二次世界大戦後、1947年に進駐軍向けとして日本に持ち込まれたのが始まりです。 一般向けの販売が許可されたのは1956年のことでした。
一方、コカ・コーラの本格的な製造販売が日本で始まったのは1957年です。 ただし、大正時代にはすでに輸入販売されていた記録があり、高村光太郎や芥川龍之介といった文化人の作品にもその名が登場しています。 戦後はペプシ同様、進駐軍を通じて広まりました。1961年の輸入自由化以降、両社はフランチャイズ方式で全国にボトラー(瓶詰会社)を展開し、ルートセールスという直接販売方式で急速に普及していきました。
日本独自のフレーバー開発
日本市場の大きな特徴は、消費者が新しい味や期間限定商品に非常に敏感であることです。このニーズに応えるため、両社は日本独自のフレーバー開発に力を入れています。
特にペプシは、ユニークな限定フレーバーで大きな話題を呼んできました。きゅうり風味の「ペプシキューカンバー」や、あずき風味の「ペプシアズキ」、日本の食文化に着想を得て塩と和柑橘フレーバーを隠し味に使った「ペプシ ジャパンコーラ」など、その斬新なアイデアは常に注目を集めています。
コカ・コーラも、ピーチ味やアップル味といったフルーツフレーバーや、「大人のファンタ」シリーズのような特定のターゲットに向けた商品を期間限定で発売するなど、日本の消費者を飽きさせない工夫を凝らしています。 このような日本限定商品の存在は、日本のコーラ市場の面白さの一つと言えるでしょう。
現在の日本でのシェア
長年の競争の結果、現在の日本国内の炭酸飲料市場におけるシェアは、コカ・コーラが優勢な状況です。 ある調査によれば、コカ・コーラ派が約64%に対し、ペプシ派は約36%というデータもあります。
コカ・コーラは、ブランド力と強力な販売網を背景に、幅広い層から安定した支持を得ています。一方のペプシは、サントリーが製造・販売を手掛けており、独創的な商品開発や挑戦的なプロモーションで、独自のファン層を確立しています。アメリカで繰り広げられたような激しい比較広告は日本ではあまり見られませんが、水面下では今もなお、静かなるシェア争いが続いているのです。
まとめ:ペプシとコカコーラ、結局どっちが先で何が違う?

今回は、「ペプシとコカコーラ、どっちが先に誕生したのか?」という疑問をきっかけに、二大コーラの100年以上にわたる歴史と様々な違いについて掘り下げてきました。
– コカ・コーラが1886年に誕生し、ペプシコーラ(当時はブラッズドリンク)よりも7年早かった。
– 誕生の経緯は?
– どちらも19世紀後半にアメリカの薬剤師によって、当初は薬として開発された。
– 歴史的な関係は?
– 「コーラ戦争」と呼ばれる熾烈なライバル関係にあり、特にペプシが大恐慌時代に行った価格戦略や、1970年代の「ペプシチャレンジ」は歴史的な転換点となった。
– 味やデザインの違いは?
– ペプシはクエン酸による爽やかな柑橘系の風味、コカ・コーラはバニラのような甘い風味が特徴。ロゴデザインは、伝統を守るコカ・コーラと、時代に合わせて変化するペプシで対照的。
– 戦略の違いは?
– コカ・コーラは「幸福」を売る王者の戦略、ペプシは若者文化を取り込み、比較広告も用いる「挑戦者」の戦略をとってきた。
どちらが良い・悪いということではなく、それぞれが独自の哲学と戦略を持って、時代を代表するブランドを築き上げてきたことがお分かりいただけたかと思います。この記事を読んで、ペプシとコカ・コーラの奥深い世界に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。次にコーラを飲むときは、その歴史や背景に思いを馳せながら、自分はどちらの味が好みか、改めて確かめてみるのも面白いかもしれませんね。



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